いま、人を惹きつける
もっと自然で、もっと自由にあふれる力
自然美を感じさせる、自由でいきいきとしたブーケづくりを大切にする壱岐さん。
日々、花を通じて自然と対話する彼女に、花のある暮らしの魅力や環境への想いをうかがった。
爆速の人生から一転、
花に教えられ、生き急がなくなった
原宿の路地裏にひっそりたたずむ古民家。壱岐ゆかりさんがオーナーを務める生花店「The Little Shop of Flowers」は、その軒先にある。木漏れ日と静寂に包まれたこの場所に、花屋を構える壱岐さんだから、根っからのナチュラリストなのかと思いきや、実はそうでもないらしい。かつてはインテリアやアパレルブランドのPRとして奔走し、爆速で生きる毎日だったとか。
「花屋を始めて10年経った今、大きく変わったのは『生き急がなくなった』こと。花は、急いで処理するとうまく水が上がらないし、きちんと手をかけないと長く愛でられません。そんな花たちとのふれあいを通じて、丁寧に生きることの大切さを教えてもらいました」
心身のバランスを保つためにも、花とのふれあいが欠かせないと語る壱岐さん。妊娠中のスタッフがつぶやいた「花をさわってると、つわりがやわらぐ」という言葉に深くうなずき、こう続ける。
「ちょっとスピリチュアルに聞こえるかもしれませんが(笑)、花にふれていると、心身が癒されるのをはっきり実感できます。漢方薬とまでは言わないけれど、人間も動物だから、自然の植物の香りや色、感触などにやすらぎを覚えるのでしょうね。都会で忙しく暮らす人間にとって、花を愛でることは食事と同じくらい不可欠だと思っています」
ムダやゴミを出さずに循環させる
サスティナブルな花屋でありたい
「The Little Shop of Flowers」のブーケは、お行儀よく束ねられた一般的なブーケとは一線を画す。花たちがいきいきと躍動しているような、自由闊達さが印象的だ。「花は自然界にあるそのままの姿が美しい」と考える壱岐さんは、「どれだけ自然な姿につくれるか」を楽しんでいるという。だから、丈や姿がそろった優等生に育てられた花だけでは満足できない。最近では花農家とタッグを組み、市場で弾かれてしまうような花を直接仕入れたりもしている。枝ぶりが曲がっていたり、大きく育ち過ぎた花だって、ブーケの中では個性的なアクセントになるから。
「花農家さんに直接会いに行く機会が増えて、話を聞いたり農園を見たりするうちに、さらに花の魅力に開眼しました。そして、農家の方々の生き方にも刺激を受けています。まさに太陽の動きや気温、風といった自然の変化とともに生きている人たちの、おおらかさがうらやましくて。日常に花を取り入れることで、彼らのようになれたらいいな、と思います」
花農家と交流を深めるなかで、今まで以上に環境への関心が高まり、「いかにゴミを出さずに循環させるか」を意識するようにもなったという壱岐さん。
お店で毎日使うエプロンも、エコロジカルな特注品。コールドプレスジュース店で出た野菜や果物の搾りかすで染色されている。さらに今後は、「湯切りした茎など、やむを得ず廃棄する有機物を土へ戻し、花を育てるのに使う循環の仕組みをつくっていきたい」とも考えている。
自宅に戻れば一児の母
子育てを通じて学ぶことも多い
生花店のオーナーとして多忙な日々を送る一方、一児の母でもある壱岐さん。「平日は息子と過ごす時間が短くて」と言いながらも、一緒に夕食の準備をしたり、宿題を手伝ったり、絵を描いたりしながら、できる限りコミュニケーションを取っているそう。家族の洗濯物をたたむ、そんな日常のひとときが大切なリラックスタイムに。
今では小学一年生になった息子さんが幼かった頃、大好きでよく読んでいた絵本があるという。それは、水の循環をテーマにした絵本。洗剤を含んだ下水が川に流れ、海に注ぎ、雨になって戻ってくるという内容だった。
「汚い水を流すと、生き物が死んじゃうんだね」。息子さんに言われ、ハッとした。そういえば、サーファーの友人も海洋汚染について話していたなと思い出し、「洗剤が流れていく先の自然」を改めて意識するようになった。
「それからは、どうせ選ぶなら自然を汚さない洗剤がいいなと思って。以前からサラヤのヤシノミ食器用洗剤を使っていたので、その後、ヤシノミ洗たく洗剤と柔軟剤も使ってみたら、無香料というのが新鮮で。なにより環境にやさしいから、罪悪感をもたずに気分よく使えて気に入っています」
- Profile壱岐 ゆかりさん
- 生花店「The Little Shop of Flowers」オーナー、フラワーアーティスト。独自のスタイルは多くのファンに支持され、日々の小さな贈りものの提案や装飾、演出を行う。2013年よりレストラン「eatrip」を主宰する野村友里さんとともに現在の原宿に移転。2016年、「6(ROKU) BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS」内に2号店、2019年、「渋谷パルコ」内に3号店「The Little Shop of Flowers」をオープン。
instagram @thelittleshopofflowers